〈作家コメント〉
私は長らく「彫刻」という表現手段に霊性を与えようとしてきた。具象・抽象を問わず、彫刻には表現されたものの価値を変換し、物質を超えた“何か”を体感させるスピリチュアルな造形要素がある。
私の表現しようというテーマには、貝殻、石ころ、植物や波に洗われて原形を失った漂流物等…、パンや米粒、穀物、光や影といった天気に纏わるものたち、音、季節等…が登場するがこれらは日々の生活の断片であり、細々としたものとして表現されている。そうかと思えば、自然の森羅万象や天変地夭を予期させるものまでテーマとして扱われている。これは、私の人生経験で得た自然観であり、無常である。自然のテーマに属するものたちは、海の波飛沫や水の流れ、生々流転、砂丘のイメージで巨大である。
《隕石》という作品は、作品を構成する岩石がもとは硬質な鉄の皮膜を被った一個の巨大な玉石であったことが起因している。この作品の制作に私は壮大な時間を要したが、作品を形作るために、巨大な岩石の周囲をぐるぐると旋回し、厚い皮膜を何層も剥がしながら造形したのだが、これは石彫を語るうえで特筆すべき点である。
「彫刻」は、断片的であるが寄せ集めて私の生きた証=日記になれば良い。初期には素描のイメージで取り組んだ写真作品と、発表に合わせて断続的に書いた文節の並び(詩)がある。近年は、詩的イメージから金属の彫刻に造形遊びを見出している。
保坂 航子 HOSAKA Kouko
福島県生まれ |
2016 |
武蔵野美術大学大学院造形研究科修士課程美術専攻彫刻コース修了 |
[個展] |
2007 |
「南国の思想」 ギャラリー山口、東京 |
2014 |
「神話作用」 仙台アーティスト・ラン・プレイスspace B、宮城 |
2015 |
「沈思黙考」 仙台アーティスト・ラン・プレイスspace A・B |
2016 |
4月 ギャルリー東京ユマニテbis、東京
(同10月, '17,
'18, '19,
'21, '22)
仙台アーティスト・ラン・プレイスspace A ('17) |
2017 |
「保坂航子展」 武蔵野美術大学彫刻学科伊藤誠研究室 madogiwa、東京 |
2020 |
「保坂航子展」 いりや画廊、東京 |
[グループ展] |
2008 |
「アートジャム・gift展」 ギャラリー山口 |
2014 |
「線を積む Piling Lines」 FAL/武蔵野美術大学、東京 |
2015 |
「彫刻と対話法」 府中市美術館市民ギャラリー、東京 |
2016 |
「東京五美術大学連合卒業・修了制作展」 国立新美術館、東京
「仙台アーティスト・ラン・プレイス参加作家による作品展」 仙台アーティスト・ラン・プレイスspace A・B
「新制作展」 国立新美術館 ('17, '18)
「第32回財団法人北野生涯教育振興会彫刻奨学金受賞者展」 日本大学藝術学部芸術資料館、東京 |
2017 |
「彫刻の五・七・五 Haiku Sculpture 2017」 女子美術大学女子美アートミュージアム、Joshibi SPACE 1900、東京 |
2019 |
「壁11㎡の彫刻展4」 いりや画廊 |
[受賞]
平成15年度武蔵野美術大学造形学部卒業制作優秀賞
第32回財団法人北野生涯教育振興会彫刻奨学生受賞
[設置]
「horobi-na」 翠が丘公園、福島県須賀川市
「流れのなかに」 藤垈の滝公園、山梨県笛吹市 |
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「みどりこ(嬰児)」
2021
蛇紋岩
27.0×52.0×23.0cm
「메아리(メアリ)」
2021
上:ブロンズ
下:大理石
各 25.0×26.0×2.0cm
「隕石」
2017
伊達冠石(玄武岩)
75.0×150.0×130.0cm
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