野田裕示(のだ・ひろじ)は1952年和歌山県生まれ。1976年多摩美術大学油画科卒業後まもなく、当時現代美術の先駆的画廊であった南画廊(東京)の志水楠男氏に見出され、初めての個展を行い早くからその実験的でダイナミックな作品は注目を集めました。
野田は、一貫して支持体と絵画の関係に取り組んだ作品を発表しています。国内外の美術館、画廊での展示を精力的に行ない、2001年には芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞。さらに、近年は石彫の岡本敦生氏とのコラボレーションで石の彫刻にアクリル絵の具によるペイントを施した作品で2005年「現代日本彫刻展」で毎日新聞社賞を受賞するなど、立体と平面による新しい展開も見せています。2010年秋にはJean
Art Gallery にて、ソウルで初めての個展を開催しました。
昨年(2012年)1月には国立新美術館(東京・六本木)で東京では初めてとなる大規模な回顧展が開催されたのは記憶に新しいところです。1980年代初期から新作約140点が展示され、圧倒的な作品群とその独特の絵画世界は好評を博しました。
野田の作品は80年代初期、レリーフ状の箱型作品から始まり、徐々に支持体全面を袋で被い、カンヴァスを重ねて画面を構成する手法に移行していきました。また近年は、人体のような白いフォルムが浮かび上がり、シンプルで躍動的な作品を見せています。
今回の作品は、昨年国立新美術館での個展以降に制作された新作で、従来のカンヴァスを重ね全体を被った凹凸のある重厚な印象から一転してフラットな画面となり、絵具を何層にも重ね削り取られた手法はそのままに、白の背景に記号のような形態が連続する軽やかな作品となっています。本展は全て50号の作品で16点が展示されます。
次々と新たな試みを見せてくれる野田裕示の新作展。今回もこの機会をお見逃しなく是非ご高覧下さい。
>> 野田裕示 略歴
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