ギャルリー東京ユマニテでは3年ぶりとなる飯嶋桃代の新作展を開催いたします。飯嶋は1982年神奈川県生まれ。2011年女子美術大学大学院美術研究科博士後期課程を修了。古着やボタン、食器、鏡などの日用品を用い、白いパラフィンワックスに封じこめて切り出した立体作品や、展示空間を覆いつくす大掛かりなインスタレーションを発表、社会と個人、個人と家族といった関係性をテーマに制作してきました。
飯嶋は近年、疾患と治癒をテーマとし、2019年の個展では「因幡の白兎」に登場する皮を剥がれた兎がやがて兎神へと変化する過程を通過儀礼と捉え、オブジェや映像によるインスタレーションを発表しました。2021年の個展では「伊予国風土記」に記された道後温泉で神が身体を癒したという神話を手がかりに、病から回復していく空間としてのインスタレーションを彫刻や音楽、振り子による物理現象などを用いて展開しました。
民俗学や神話に興味を持つ飯嶋が今回のテーマに選んだスフィンクスは、ギリシャ神話では女性の頭にライオンの身体と鷲の翼を持つ怪物とされています。このスフィンクスは通行人に謎をかけ、解けないものを食い殺していましたが、オイディプスが謎を解くと岩の台座から飛び降り谷底へ身を投げて死んだといいます。飯嶋はスフィンクスの台座という視点からこの謎かけを掘り下げ、陶製の頭蓋骨を蝋で鋳込み台座の形に切り出した立体作品を中心としたインスタレーションを発表いたします。地下会場(2月17日まで)にもペインティングと立体作品を展示いたしますので、ぜひご高覧いただきますようお願いいたします。
〈作家コメント〉
街の子供が得意げに問うてくる
朝は4本足昼は2本足夜は3本足
なんだ?
答えをわたしは知っている
だって有名なナゾナゾだもの
なぜかその日から知っているはずの答えを問い直す日々が始まった
わたしたちは夜を待つことはできないのかもしれない
オイディプスの姿はまだ見えない
スフィンクスは絵画はもとより彫刻作品も多くの作家によって創作されてきたが、わたしはスフィンクス像のための台座を作ることにした。
スフィンクスはフェキオン山に座し、旅人に謎を問いかけ答えられない者を食い殺していた。きっとフェキオン山には多くの旅人の亡骸が埋まっていたであろう。
多くの亡骸が埋まったフェキオン山からスフィンクスが鎮座する台座を切り出す。それは「人間」という答えを据える台座となるだろうか。
>> 飯嶋桃代 略歴
>> 作家ウェブサイト
〈前回の展覧会〉
飯嶋桃代展 IIJIMA Momoyo
「Recovery room―ましましいねつるかも」
2021.2.8(月)‐2.27(土)
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