遥かむかし、 かの藤原定家は、元久元年一月京の夜空に出現したオーロラ、妖しの変異を記す。 〈明月記〉
加納光於(かのう・みつお/1933-)は独学で銅版画を学び、1950年代半ばから作品を発表。1960年代からリュブリアナ国際版画ビエンナーレ、東京国際版画ビエンナーレなど数々の国際展で評価を高め、日本を代表する作家となりました。初期の作品は植物や生物を思わせるモノクロームの銅版画を中心に、その後メタルプリント、リトグラフ、オブジェなどを発表。また、瀧口修造、大岡信など詩人とのコラボレーション、舞台美術、ブックワーク等幅広い活動を行ってきました。さらに1980年代からは色彩豊かな油彩を発表。近年では愛知県美術館(2000)、神奈川県立近代美術館 鎌倉(2013)、CCGA現代グラフィックアートセンター(福島/2017)での個展など、現在も精力的に発表を続けています。
加納は80年代から、それまで発表してきた版画とともに新たに油彩にも取り組み、以降は並行して制作を続けますが、90年代半ばにはモノタイプの作品を発表します。版表現ではあるものの、その瞬時のイメージを留める一枚もののモノタイプは、加納がそれまで追い求めてきた魅惑に満ちた色彩の瞬間を捕らえる新たな手法として位置づけられました。
今回の作品タイトルは《平家物語》。平家の栄華と没落の人間模様を描いた物語は琵琶法師による語り、そして能楽に最も影響を与えたとされます。能楽にも興味を持つ加納が様々なイメージを展開し作られた画面からはいくつもの色層が重なり合って妖しくも独特の印象を与えます。
今回は1990年代に制作されたモノタイプを中心に、2000年以降の未発表作品を含め約30点出品いたします。是非ご高覧下さい。
>> 加納光於 略歴
〈以前の展覧会〉
加納光於 《稲妻捕り》 Elements 1978 「言ノ葉」と色象のあわいに
KANO mitsuo Catcher of Lightning: Elements 1978
2017.4.10(月)‐4.28(金)
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