加納光於(かのう・みつお)は1933年東京生まれ。独学で銅版画を学び、1950年代半ばから作品を発表。1960年代にはリュブリアナ国際版画ビエンナーレ(ユーゴスラビア)、東京国際版画ビエンナーレなど数々の国際展で評価を高め。日本を代表する作家の一人となりました。その後1980年代からは色彩豊かな油彩作品を発表し国内外の美術館で展覧会を開催。近年では2000年愛知県美術館、2013年神奈川県立近代美術館 鎌倉での個展など、現在も精力的に発表を続けています。
加納が作品を発表するきっかけとなったのは、まだ10代の1954年、詩人、美術評論家として活躍していた瀧口修造(1903-1979)との出会いでした。ほぼ独学で制作した加納の銅版画に瀧口は熱心に見入り、その類いまれな才能に注目し、展覧会の企画を行っていたタケミヤ画廊(東京)の銅版画グループ展に出品を勧めます。1956年には初個展となる銅版画展が同画廊で開催され、さらに多くの国際展で評価を高めていきます。
その後も瀧口との親交は続き、1977年南画廊(東京)での最後の個展「稲妻捕り」では、リトグラフの他に100点ものエンコスティック(蜜蝋)ドローイングが発表されます。この作品に呼応して瀧口が「《稲妻捕り》とともに」と題する詩(手稿)を添え、1978年には書肆山田より「詩画集 《稲妻捕り》 Elements」が刊行されましたが、翌年の1979年瀧口は逝去します。
《稲妻捕り》シリーズは初期モノクロームの銅版画から、徐々に実験的な色彩を試行する中で初めて手掛けたリトグラフ作品で、それと同時に限られた色調による蜜蝋と顔料を用いたエンコスティックドローイングが制作されました。この作品がその後1980年代の色彩鮮やかな油彩に繋がり、加納の仕事の中でも重要な位置を占めているといえます。
今回の展示は、本詩画集「《稲妻捕り》 Elements」に収められた30点の原画とすべての作品に添えられた瀧口の詩と共に展示いたします。加納の画業に大きな影響を与えた続けた瀧口修造との最後となったコラボレーション作品。この貴重な機会をお見逃しなく是非ご高覧下さい。
尚、ギャルリー東京ユマニテは3/27(月)より京橋3丁目へ移転いたしました。本展は移転後初めての展覧会となります。今後ともどうぞよろしくお願いします。
>> 加納光於 略歴
〈以前の展覧会〉
加納光於 《挿画抄》 1972-'79 KANO mitsuo
2015.12.14(月)‐12.26(土)
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