富田菜摘(とみた・なつみ)は1986年東京生まれ。多摩美術大学油画科在学中の2007年にギャルリー東京ユマニテで初個展後、東京、名古屋、大阪などのギャラリーで個展を開催。浜田市世界こども美術館、妻有アートトリエンナーレ、「高島屋美術水族館」など多くのグループショウで作品を発表。また、2009年にはシンガポールに滞在し現地で集めた素材で制作し、シンガポールや香港でも発表。その他にも金属廃材を使ったワークショップを行うなど多方面で活躍し、現在最も注目される若手作家のひとりです。さらに今年1月には佐藤美術館(東京・新宿)での個展で子供から大人まで多くの来場者を集め好評を博しました。
富田の代表的な作品は、自転車や電子機器などの金属廃材を組み立てて作られた、キュートで愛らしいカメやザリガニ、ワニ、鳥などの動物の立体作品で、大きいもので約2m、中には椅子のキャスターをそのまま仕込み、子供がその上に跨いで乗ることもできるようになっています。
富田が金属の作品と並行して発表しているのが、新聞や雑誌の切り抜きを使った等身大の人物です。それぞれの人物には彼女がイメージしたキャラクターと架空の名前が付けられ、メタボおじさん「鈴木虎之介」は新聞の健康欄に見入り、モテキャラ女子大生「山田友里」は雑誌cancamで、海外からのビジネスマン「ジョージ・ウィリアムズ」はジャパンタイムスでと、その表情や服装、スタイルは彼らを象徴する素材で驚くほど精巧に作られています。
さらに、今回の新作は一昨年発表の浮世絵をモチーフにした半立体状レリーフの作品と同じ手法で、絵巻物を連想させる現代の人間群像を作り上げました。
子供の頃に友達と真面目に取り組んだ運動会のように、今でも私たち大人は何気ない日常の中で運動会さながらの真剣勝負を続けています。国会の乱闘騒ぎは騎馬戦、カップルは二人三脚、合コンは花いちもんめ。しかしながら、その真剣な様子は不思議と滑稽な姿に見えてきます。今回メインの作品となるのは「騎馬戦
‐国会乱闘」。議員バッチは宙を舞い、メガネを落として慌てふためいている議員や、血眼になって戦う彼らを冷静に見つめ様子をうかがっている者たち。この作品は長さ5mほどの大作で絵巻物の鳥獣戯画がヒントになったといいます。常に現代の世相をリアルに見つめる富田の眼差しには、どこか毎日を普通に暮す人々への愛しさが感じられます。
本展はギャルリー東京ユマニテで3年ぶりの個展となり、人物レリーフの大作を中心に10数点、その他に金属の動物作品も発表します。また、同時期開催で、東京・表参道のGalerie
412においても金属を素材に動物作品を中心に個展を開催します。空間の違う2会場同時開催となる今回。次々と新たな展開に挑戦する富田菜摘の新作をお見逃しなくどうぞ是非ご高覧下さい。
>> 富田菜摘 略歴
「騎馬戦―国会乱闘」 2013 新聞紙、ミクストメディア 185×480cm
"Kibasen - the Diet Brawl" 2013 Newspaper, mixed media
<作家コメント>
子どもの頃の運動会。
失敗したって、負けたって、なんてことないはずなのに、みんな真剣だった。
かけっこ、騎馬戦、組体操・・・
大人になっても、私たちは色々なところで、そんな競技さながらの真剣勝負を続けている。
普段あたりまえのこととして見ているものが、見方を変えるとちょっと面白くなる。
作品を見てクスリと笑ってもらえたら嬉しい。
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「騎馬戦―国会乱闘」(部分) 2013
新聞紙、ミクストメディア
"Kibasen - the Diet Brawl" (detail)
Newspaper, mixed media
185×480cm
「花いちもんめ―合コン」 2013
雑誌、ミクストメディア
"Hana Ichi Monme - Group Blind Date"
Magazine, mixed media
113×158cm
「組体操―核家族」 2013
新聞紙、ミクストメディア
Newspaper, mixed media
60×45cm
<Galerie412 出品予定>
「清志郎」 2013
金属廃材、ミクストメディア
Scraped metal, mixed media
63×39×57cm
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