NODA Hiroji  WORK 1737
「three_6」 2009 oil on canvas 65.2×100.0cm


菅野由美子は1960年東京生まれ。東京造形大学在学中に作品の発表を始め、’86年のシドニー・ビエンナーレ、’89年の「第3回アジア美術展」(福岡市美術館、横浜美術館、韓国国立現代美術館巡回)など、数多くの国内外の展覧会に参加。’80 年代前半から女性美術家が流行的に台頭したいわゆる「超少女」の一人として注目を集めました。
当時、菅野は木、鉄、粘土などを素材にコンセプチュアルな立体作品を発表していましたが、’92年の個展を最後に制作活動を中断していました。
そして数年ほど前から、日常身の回りにある小さな置物などを油彩で丁寧に描く仕事を再開。2007年の15年ぶりとなる個展では以前の立体から一転、古典的な油彩の小品を発表し好評を博しました。

16-17世紀のヨーロッパで見られた静物画を思わせる、均一に塗られた背景。その中に菅野自身が様々な国を旅して集めた壷、ビン、器、皿などが、茶事の見立てのように物語に沿って選ばれていきます。しかしながら、それらはどことなく擬人化された肖像画のようでもあり、また、光線までもが計算された静謐な画面は、何事も起こらない淡々と過ぎていく平和な日常の気配を感じますが、その静けさの奥にある力強い存在感は、見るものが不思議と自身の内面と向きあう作用へ導かれるようでもあります。菅野の作品はストイックであるがゆえに、小さな画面から無限の広がりへとイメージは膨らんでいきます。

今回の個展では、前回2009年以降に制作された新作約20 点を発表いたします。前回までの作品の均一に整然と並んでいた対象物の構図が変化し、新作ではそこに当然あるべきものが忽然と消え、異常なまでの不安感に駆られます。菅野自身が器に対して持つ「空洞」という感覚は、未完であるが故の魅力に満ち溢れています。絶対的な不安感とそれを満たそうとする飢餓感。そして、菅野は対象物がなくなった空気感を描きたいと言います。それは存在したであろうものの気配を描くという究極の絵画かもしれません。
ギャルリー東京ユマニテでは2年ぶりの新作展となります。菅野の作品を通して絵画と対峙する幸福感をじっくりと味わっていただきたいと思います。今回もお見逃しなく是非ご高覧下さい。

【作家コメント】
器は、器であるがゆえに空洞をもつ。なにかがその空洞を埋めてはじめて器たりえるとしたら、からの器がそこにあるだけでは本来は不完全なのかもしれない。あるいは、その未完の在り方が、器というものの特質だとも言える。時にその器のまわりには、それを扱う人々の気配がするようで何となく気持ちが揺さぶられるのだが、しかしやはり、ただ目の前でぽっかりと空いているだけの、沈黙の空洞に心惹かれるのである。
なのでこの絵もまた、器のもつ不完全性や不在感の意味を負うのである。見る人たちが大切な何かを込めておけるような、静かな空洞のある絵だといい。

 


「six_1」 2010 oil on canvas 16.5×84.1cm


「seven_1」 2010 oil on canvas 41.0×82.0cm

 

<以前の展覧会情報>

2009 菅野由美子展
2007 菅野由美子展

 

<展覧会概要>

菅野由美子展 SUGANO Yumiko
2011. 2/7 (月)‐2/26 (土) 日曜、祝日休廊 10:30-18:30
展示内容 油彩新作約20点

 

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