中井川由季は多摩美術大学大学院修了後、1980年代から陶を素材に立体作品の制作を試み、国内外の展覧会で発表。作品は多くの美術館にコレクションされ、コミッションワークも手掛けています。
土を捏ね、焼き上げて生成される陶は古来から用の美として器などで使われてきましたが、中井川はその身近な素材でいくつものパーツを組み合わせて大規模な作品を作り上げるという手法で作品を発表しています。近年取り組んでいるのが、少しずつ表情が異なるいくつかの形を並べたり、積み重ね構成される作品で、小さな固まりが持つ集合体はまるで命を宿した生き物のように不思議な存在感に満ちています。
今回は野外展示のために制作された高さ3.2mもの作品を地下空間で発表します。難しい状況が続いた2年間ではありましたが、そのような中で生まれた、ひんやりと滴り落ちる水をイメージした大作。是非ご高覧下さい。
〈作家コメント〉
この作品は当初、野外の特定の場所を想定して作りました。2年の時が経ちその実現が難しくなり、画廊のホワイトキューブに場を求めて、今回展示する事となりました。
この2年間は、自然の脅威に曝され、大国の振る舞いに揺さぶられる日々だったように思います。まだ終わりは見えませんが、最初は、驚き、怯え、不安になり、時に怒りを覚えた事柄にも次第に慣れて暮らしていくようになりました。人は遥か昔から、繰り返し、繰り返し、そうやって何かを失い、けれど忘れて、超えて来たのでしょう。
設置する予定だった場所近くに、岩の隙間から滲み出た湧き水がありました。水が滴り、流れる行方を思い描いて作った形です。時を経て、それが再び地中に戻っていくように地下空間に置きたいと思います。
ひんやりとした地中へ。
>> 中井川由季 略歴
〈前回の展覧会〉
中井川由季展 NAKAIGAWA Yuki
2021.3.8(月)‐3.27(土)
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