井上は1957年神戸市生まれ。多摩美術大学大学院美術研究科修士課程を修了後、1980年代から陶を素材に立体作品の制作を試み、国内外の展覧会で発表。多くの美術館などに作品がコレクションされています。
土を捏ね焼しめて生成される陶は古来から日常的な暮らしの中で様々な形で使われてきましたが、井上はその身近な素材でいくつものパーツを組み上げて構成し、大規模な作品を作り上げるという新たな手法で日本を代表する作家の一人です。さらに、2017年には「第24回日本陶芸展」で大賞を受賞し現在も精力的に発表を続けています。
今回は昨年に続いての個展となりますが、作品制作のプラン、ドローイングとなるMaquette(マケット)に焦点を当てた初めての展示となります。形を決定する際に、実験的に作られるのがマケットですが、井上は以前から身近な素材である段ボール板を駆使して制作してきました。それらはマケットという概念にとどまらず、様々な表情を見せるユニークな小作品といえます。さらに昨年からは新たな素材として鉄の溶接によるマケットも展開しています。
今回は天井高3.7mの地下スペース(hummanité bis)での発表となります。日々、あふれ出るイメージから新たな形が生まれる井上の段ボールマケット。お見逃しなくご高覧下さい。
〈作家コメント〉
どうも僕は形に反応するようです。目の前にある形にです。もちろん自分自身が作り出した形にも同様です。このことを自覚して以来、叶わぬこととは思いながら瞬時に気付いた形を目の前にしたいと考えるようになりました。そんなことを実現してくれそうな素材がダンボールでした。ダンボールには既に形があります。資材としてのダンボールは、更に働きかけると変形し新たな相貌を表します。その相貌への僕自身の感応を観たいと思う欲求の表れです。
〈出品内容〉
段ボール、鉄によるマケット作品(約30×30×20cm)約80点
>> 井上雅之 略歴
〈以前の展覧会〉
井上雅之展 INOUE Masayuki 「煙のゆくえ」
2018.9.25(火)‐10.13(土)
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