高橋常政(たかはし・つねまさ/ b. 1949 東京)は1974年にウィーン、ハンブルクに渡り、R. ハウズナー、E. フックスに師事。主に油彩、テンペラの混合技法を学び、ウィーンで個展を開催。以後約4年間ヨーロッパで活動しました。
帰国後は、個展やグループ展などで作品を発表。その傍ら雑誌の挿絵、本の装丁、表紙画のイラスト、絵本など約40年に渡り画家、イラストレーターとして活躍。劇団四季ミュージカルのポスターデザインなども長く手掛けています。ギャルリー東京ユマニテでは1985年に初個展。その後も発表を続け、2011年には18年振りの個展を開催し、今回は4年振りの新作展となります。
高橋はその時々で興味のある絵画を徹底的に研究し、自身の作品を通して読み解いていきます。前々回の個展では、アンジェリコ、ボッティチェッリと室町期の等伯、狩野派、宗達、そして若冲などに焦点を当て、色彩豊かな油彩テンペラで、ヴィーナスをイメージさせる女性像に若冲の「動植綵絵」を彷彿とさせる動植物が渾然一体となった作品を発表しました。さらに前回(2015年個展)には、菩提寺である蓮華寺(東京・巣鴨染井)のふすま絵制作の機会を得、中国北宋と、室町から江戸末期の絵画を研究し、いわゆる滲みの水墨画ではなく、墨で鮮明に描く「墨描画」で10mものふすま絵を発表しました。
金箔の海に横たわる巨大で躍動感あふれる魚やサイ、象。今回の新作も圧倒的な存在感を放つ3mもの大作を中心に、動物や風景、人物像など様々なモチーフを描いた作品を約50点発表します。日々精力的に描き、あふれ出す沢山のイメージと格闘する高橋の新作、今回もお見逃しなく是非ご高覧下さい。
〈作家コメント〉
「見つめてくる「イメージ」を見つめて」
「イメージ」は無限にある、と不用意に断定してみます。もしも「イメージ場」があるのなら、イメージのかけらは無限にあるのか。そうするとイメージのかけらは質量のような「意味」があるように見えてくるのかもしれない。
僕の机上はイメージメモが散乱しています。全てが作品になることはなく、ほとんどは泡のように消えていきます。その中の少しのイメージが僕を見つめ返してくる。早く描けとそのイメージが変貌していきます。何かの深淵を覗き込むような、とても怖いときがある。それが美しいのか気持ち悪いのか描かないとわからない。僕の制作は「応急措置と対症療法」のようなもので、ただ立ち会っているだけのように思えます。白い画面に下地の色を塗っただけで「イメージ」が休みなく要求してくる。このままでは消えてしまうよ、と見つめ返してくる。
なぜ描くのかという疑問はもう全くない。「イメージを見つめる」ことは日常の掃除と洗濯と同じ様相。作品は、今「見つめ返してきたイメージ」への対応の痕跡にすぎず、僕の絵には「意味」がない。空中に留まっている動かない葉っぱのようなものです。
>> 高橋常政 略歴
〈以前の展覧会〉
高橋常政 TAKAHASHI Tsunemasa -巣鴨染井蓮華寺ふすま絵と「墨描画」
2015.3.23(月)‐4.11(土)
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