高橋常政(たかはし・つねまさ)は1949年東京生まれ。学生時代に偶然見た「ウィーン幻想派」の展覧会での衝撃的な出会いから、'74年にウィーン、ハンブルクに渡り、R.
ハウズナー、E. フックスに師事。主に油彩、テンペラの混合技法を学び、'78年までの4年間ヨーロッパで活動し、'76年にはウィーンで個展も開催しました。
帰国後は、個展やグループ展などで作品を発表。その傍ら雑誌の挿絵、書籍の装丁、表紙画、映画ポスターなどのイラスト制作、舞台・衣装デザインを行ない、明快でインパクトある人物像で注目を集めました。その後、約30年に渡り画家、イラストレーターとして活躍。2011年にはギャルリー東京ユマニテにて18年ぶりとなる個展を開催しました。
2011年前回の個展では、以前から興味を持っていたルネッサンス期のアンジェリコ、ボッティチェッリと室町期の等伯、狩野派、宗達、そして若冲など日本絵画との関係性を自身の作品を通して読み解こうと試みました。2.5mもの大作では、ヴィーナスをイメージさせる女性像に若冲を彷彿とさせる動植物が渾然一体となって描かれ、楽しくインパクトある作品となりました。
本展は、高橋が菩提寺である蓮華寺(東京・巣鴨染井)のふすま絵制作の機会を得、2年前から取り組んだ作品を発表します。数年前より、中国北宋と、室町から江戸末期の絵画を研究し、いわゆる滲みの水墨画ではなく、墨で鮮明に描く絵画「墨描画」でふすま絵を制作しました。墨を用いてはいますが、日本独特の儚さではなく西洋絵画にも通じる力強さと絶対的な合理性。両者の関係が相まって不思議な魅力に満ち溢れています。
今回は、前回の色彩豊かな油彩テンペラから一転し、モノクロが故に圧倒的な存在感を放つ10mものふすま絵を中心に、墨で描かれた風景、動物などの作品約15点も併せて発表します。精力的にまた新たな展開を見せる高橋。今回もお見逃しなく是非ご高覧下さい。
<作家コメント>
長い間、油彩、テンペラの混合技法で描いてきましたが近年は室町から江戸末期の日本絵画と北宋の中国絵画の研究を続けてきました。墨で描くことから始めましたが僕の望む表現はいわゆる「水墨画」ではありません。破墨などあいまいなにじみを避けて、宋の范覚のように筆を突き立てて刻むように「描く」方向を目指しています。自分なりに墨絵ではなく「墨描画」と名付けました。あえて言うと「墨を含んだ筆」を「無限に柔らかいクレヨン」のように使う感覚です。
幸運なことに僕の菩提寺である巣鴨染井の蓮華寺から襖11面のスペースを頂き、2年かけて「冬春雪花図」「動物涅槃図」を完成させました。また、破墨と書の研究からは「涙墨画」と名付けたものも参考として出品します。こちらは滲みのカオスに任せる技法で、自分の中に絶えず表れる衝動的な抽象表現です。この二つの方向性の極端な違いは自分でも唖然としたままですが、制作が面白くていまのところ傍観しています。
>> 高橋常政 略歴
「冬春雪花図」(完成デッサン)
<以前の展覧会>
高橋常政 TAKAHASHI Tsunemasa 「絵画の動的平衡」
2011.9.5(月)‐9.24(土)
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