名古屋を中心に活躍する久米亮子。ユマニテでは2年ぶりとなる新作展です。
透明感あふれる色彩とのびやかな画面。久米の作品は花などの植物をモチーフに描かれていますが、自然界の生命すべてに対する慈しみと愛情に満ち溢れています。今回も100号の大作を中心に10数点を発表します。この機会をお見逃しなく是非ご高覧下さい。
〈参考テキスト〉
「久米亮子の世界」
生命体らしきものが、透明感のあるアクリルで描かれている。まるで、芯にみなぎるエネルギーがかたちをむすんで花開き、かろやかにふくらんだよう。そのふくらみは、花弁のように空気を内に包み込んで力を充溢させたかと思うと、時に水に放ったインクのように画面から外へと流れ出す。カンヴァスを超えて広がる絵画空間は、身体感覚に訴えてなんとも心地よい。例えるなら、風を受けた薄いベールが肌を撫でる感触であり、ゆったりと流れる水の中にわが身を浸した心持ちである。
以前から久米は花弁を連想させるモチーフを画面の一部に登場させることはあったが、時を経て、それは主役となった。色彩の微妙な濃淡に神経を行きわたらせ、隣り合う色と色が生みだす緊張関係が慎重に追求されている。浮遊感漂う画面は、生あるもの皆すべてそうであるように、ゆるやかに動いている。全身を包みこむこの柔らかな感覚に、見る者は母親の胎内に守られているかのような安心感を抱くだろう。
これまで一貫して明るく、美しく、未来への希望を感じさせる作品を追求し続けてきた久米。その根底にあるのはゆるぎない生への肯定だ。「その一瞬、幸福感にみたされる、そんな絵を描きたい。」そう語った彼女は、今回もまたしなやかな生命の泉を見せてくれるに違いない。
喜田早菜江(元はるひ美術館学芸員)
〈作家コメント〉
「作品について」
まさか懐かしいこの場所で、再び個展をさせていただく事になるとは、夢にも思わなかった。2008年秋、この同じ空間での最後の個展からちょうど10年。今、不思議な巡り合わせを導いて下さった全てに、深く感謝せざるを得ない。
目に見えたり見えなかったり、自然界の中から浮かび上がる生命力、生命美を可能な限り純化した色と形に描きます。
>> 久米亮子 略歴
>>
作家ウェブサイト
〈以前の展覧会〉
久米亮子展 「瞬間」
KUME Ryoko "moment"
2016.10.17(月)‐10.29(土)
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