「画廊からの発言 新世代への視点2018」は、銀座・京橋を中心とした11画廊が各々に推薦する若手作家の個展を同時開催する企画です。ギャルリー東京ユマニテでは向山裕(むこやま・ゆたか)の新作展を開催します。
向山裕は1984年兵庫県出身。2004年大阪美術専門学校絵画専攻卒業後の2005年当画廊にて個展開催。100号~120号の巨大なキャンバスに、実際には指先ほどの小さな熱帯魚や、頭と尾に分かれたウナギなどを精密なタッチでリアルに描き、注目を集めました。その後、韓国での個展やグループショウ、「高島屋美術水族館」、「美の予感」(共に高島屋各店へ巡回)に出品。2012年、2015年に高島屋各店で個展を開催し、その卓越した技術によって描かれた、どこか愛着を感じさせる作品が多くの反響を呼びました。
向山が描くモチーフは、ウナギ、たこ、海ほたるなど海洋生物が多く見られます。向山は、気になった生物を入念に調べ、入手できるものは実際に飼って、その生育を共にします。それらは標本のようなリアルさで、作家の意思を殆ど感じさせない写実的な手法で描かれますが、何処か空虚な悲哀感と懐かしさにも似た愛着を感じさせます。また、絵画の他にも巨大サイズのイカの骨や米粒を樹脂で作った立体作品など新たな領域へ広がりを見せました。
これまで珍しい海の生物などを数多く描いてきた向山ですが、その興味は自然界とその生命の循環、殆どが短命もしくは一瞬で繰りかえされる美しくも儚い現象の不可思議さにあるようです。砂浜に打ち上げられたクラゲ、蝉が今まさに羽化しようとする瞬間、森の中で出会った鳥の死骸。緊張感あふれる作品からはそれらの生命体と彼らから届けられる様々なメッセージへの畏敬の念が感じられます。
今回の個展はユマニテにて4年ぶりの新作展となり、油彩を中心に立体作品も含めて約10点発表します。昨今注目を集める若手作家の中でも、高度な技術とインパクトのある作品で定評のある向山。期待の新作展を是非ご高覧ください。
〈作家コメント〉
厚い落葉を踏みしめるたび、腐植土の甘い醗酵臭が染み出してくる。
樹々の隙間から白く光る水たまりのようなものが見えた。
暗く湿った雑木林の中、そこに向かって歩き出す。
程なく正体がわかった。
ひとむらの羽毛が、地面に広がっていた。
一所にまとまっているので、遠目に水たまりに見えたようだ。
黒い地面の上、真っ白な羽毛が異様な対比をなし、
木立を抜けていく気流に、かすかにそよいでいる。
一羽の鳥が、ここで食べられたのだろう。
うずくまり、淡雪のようなそれをひと掴みたなごころに乗せる。
すばらしい清らかさ。いったい鳥は生活のなかで、どうして少しも
汚すことなく、このような純白を保てるのだろうか。
大きめの風切羽もつまみあげてみる。こちらは羽軸に沿って
薄墨を流したような柔らかな濃淡があり、白黒とは思われない
深い彩りをたたえている。
この鳥にとっての、つい昨日まで連綿と続いていた日常は、
今日ここでふいに終わってしまった。それは捕食者にとって日常の継続でもある。
かきわけ探しても、南天の実ほどの血痕も見当たらない。
なぜか怖気がふるい冷汗が湧いた瞬間、
どっと風が吹きぬけ、羽毛を落葉ごと舞い散らした。
>> 向山裕 略歴
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作家ウェブサイト
〈以前の展覧会〉
向山裕展 「砂の原野・霊告」
MUKOYAMA Yutaka "Field of sand・Message from animae"
2014.9.8(月)‐9.27(土)
〈画廊からの発言 新世代への視点2018〉
本展は銀座・京橋を中心とした11画廊の共同開催によるもので、各画廊が推薦する40歳以下の新鋭作家の個展を同時期に行う企画です。1993年に始まり、今回で19回目を迎えます。参加画廊、作家情報、スタンプラリー、ギャラリーツアーの詳細はウェブサイトをご覧ください。
主催:東京現代美術画廊会議
【スタンプラリー】
参加11画廊のスタンプをすべて集めた方限定の特典があります。
① 「新世代オーディエンス賞2018」 観客が選ぶアーティストの作品(5万円相当)を1名様にプレゼント
② 「新世代への視点2018」の期間中に購入された出品作品の代金を10%割引
【アートフルに迫ろう!高校生が行くギャラリーツアー】 *参加無料
高校生を対象に参加画廊を巡るツアーです。
ツアーコンダクター: 遠山香苗(美術家)
2018年7月30日(月) 13:30~17:30(予定)
予約受付: FUMA Contemporary Tokyo|文京アート
Email: bunkyo-art@wind.ocn.ne.jp
TEL: 03-6280-3717 |