黒田克正は1945年、滋賀県生まれ。武蔵野美術大学、東京藝術大学大学院修了後、1988年に日本国際美術展大賞を受賞し、以後、国内外で作品を発表。ニューヨークのグラフティアートに影響を受け、油彩にとどまらず、様々な素材を駆使したパワフルで即興的なペインティングが特徴です。
また、音楽家長谷川きよし、三宅榛名、女優吉行和子、舞踏家大野一雄等の舞台美術を手がけるなど、美術の垣根を越えて幅広く活躍。さらに2001年には京都女子大学で京都真如堂管主、画家の斎藤真城氏とのセッション、2006年には陶芸家清水六兵衛氏とそれぞれコラボレーション展を行い、世代を超え、互いの価値観がせめぎあう作品は好評を博しました。
今回の新作展は2年ぶりの発表となります。以前よりもさらに複雑に多くの線描と色相が交錯し、重厚な印象の作品になりました。100号の大作を中心に十数点の展示となります。この機会に是非ご高覧下さい。
<作家コメント>
「イメージの集積と溶解」
僕の絵画制作は描くという行為への原点回帰によって成り立っている。だから日々の記憶や妄想の残影を制作のきっかけにして、僕の根底にある造形的なあそび感覚のなかで、作為と無作為のせめぎあいそのままに、画面に重層的に積み上げてきた。描き出すことで立ち上がるイリュージョンを時に取り込み、あまりにも具体的であからさまであればそれを否定し、そのことにあまり頓着しないで来た。それよりも僕自身の捉える生理的な感覚の表出を大切にしたかった。
このやり方は今でも変わることはない。しかしここ数年の間に、線と色面の関係性が徐々に変化してきている。頑なに反撥させていた線と色面を、時に自立させ、時に融合させ、あまりそのことにこだわらなくなった。その結果、色彩が自立の規制から解き放たれ、フォルムは奔放に動き出す。イメージは画面でさらに溶解し、線や色彩のより生理的な造形を可能にしたように思う。
身体感覚で描くことを大切にしてきた為か、僕はあまり意識的に自分の絵画をコントロールできていない。手の実感を伴って線を走らせ、色の響き合いやほとばしりを創り出すという愉楽の中に今もどっぷりと浸っていたい。今ここに居る自分そのままの感覚で、時として襲う自身の存在の溶解という脅迫的な感情を身体感覚に置き換えて、あくまで日常的に生きた痕跡として画面に描きつけたいと願っている。僕にとっての絵画の制作とはそういうことを言う。
>> 黒田克正 略歴
<以前の展覧会>
黒田克正展 KURODA Katsumasa 「イメージの集積・拡散・消去」
2015.5.7(木)‐5.23(土)
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