ユマニテでは3年ぶりの発表となる飯嶋桃代の新作展を開催いたします。飯嶋は1982年横浜生まれ。2011年女子美術大学大学院美術研究科博士後期課を修了。学生時代から作品を発表し、2014年には美術評論家北澤憲昭氏のキューレーションによりgallery αM(東京)にて個展を開催。昨年は「第9回shiseido art egg」入選で開催された資生堂ギャラリーでの個展が好評を博しました。
飯嶋はこれまで誰かが身に着け、使ったであろう衣服や食器などの日用品を家型の白い透明なパラフィンワックス(蝋)に封じこめた作品や、衣服のボタン、ネームタグ、毛皮などの古着を用いて壁面を覆いつくすような大掛かりなインスタレーションを発表してきました。それらの素材は、すでに様々な人々の記憶やぬくもりを纏ったものであり、また、家や衣服は安全に身体を保護するという目的も持ち合わせています。飯嶋は家、家族という常に守られた共同体の安心感と同時に、それを構成する個人一人ひとりの危うい関係性をテーマに制作しています。
今回は器を廃棄する場である「ものはら」をキーワードに、約600枚の茶碗を使ったインスタレーション、その他小品数点を発表します。様々な価値観や問題をはらんだ現代の家族、家の在り方と個人の関係。美しくも儚く、力強い飯嶋の世界、お見逃しなく是非ご高覧下さい。
<作家コメント>
作品タイトルでもある、「ものはら」とは「物原」つまり窯で焼成に失敗した器を捨てる廃棄場のことです。「物原」を掘り起こすことによって、当時生産された器の歴史を知る大事な手掛かりになるそうです。
今回、量産型の素焼きの茶碗と、窯の中で癒着し廃棄された古い茶碗をつかい、インスタレーション形式で展示します。茶碗は属人器といい、家族の中でも茶碗の持ち主は決まっている事が多いと思います。つまり個人を指す器ともいえます。その一つ一つの茶碗を人に見立て、集積し積み上げていくことによって生じる、器同士の関係性に家族の個人間の関係性を見据えることを試みました。物原からかつての器の記憶が立ち上がるように、過去から照射される現代の家族の在り方が浮かび上がればと思います。
>> 飯嶋桃代 略歴
<以前の展覧会>
画廊からの発言 新世代への視点2013
飯嶋桃代展 IIJIMA MOMO-yo
2013.7.22(月)‐8.3(土)
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