岡田ムツミ(b. 1953)は女子美術短期大学卒業後、1985年渡独。ケルン美術大学、パリ・ボザールで絵画を学び、92年にケルン美術大学でマイスター・シューラー号取得。その後約30年にわたりドイツ・ケルンを拠点としてヨーロッパや日本で発表を続けています。本展はギャルリー東京ユマニテにて3年ぶり5回目の新作展となります。
岡田の作品は、カンバスに油彩の極限られた色調で描かれています。一見ストイックでシンプルな作品ですが、その整理された画面からは実に饒舌で芳醇な香りが漂ってきます。岡田は、例えば日課になっている散歩で訪れる公園の風景、耳にする音楽、小説などから受ける感情、感覚を視覚的に表すにはどうしたらよいか、それらを絵画に置き換えたら…、という手法で作品を作り上げていきます。それは、長年日本から遠く離れてきた彼女の生き様そのものが作品となり、人間が本来持っている全ての感覚を呼び覚ましてくれるようでもあります。また、数年前からは金属板に油彩を施す手法に出会い、銅やアルミ板など素材本来の美しさと油彩との調和でさらに岡田の世界は広がりました。
さらに今回は、本展後に長野県上田市の真言宗瀧水寺にて作品を展示する機会を得、弘法大師空海が説く「六大」(地、水、火、風、空、識が宇宙の万物を構成している)を表現することを試みました。日本の伝統的な神道文化に育った岡田が西欧的観点から自身の精神的根源を探す仕事が発表されます。また、これらの作品は9月にはドイツケルンの教会での展示と続きます。それぞれの展示には、声明やフルーティストの演奏も企画され、作品とどのような相乗効果がなされるか楽しみな機会となります。
この豊かでありながら、静謐な瞑想性さえもが漂う岡田ムツミの作品。今回は、油彩、キャンバスの大作と金属板に油彩の新作を含めて約10点を展示いたします。絵画の原点に戻り、充実感に満たされる作品、お見逃しなく是非ご高覧下さい。
<作家コメント>
2012年から15年まで、金属板に油彩の仕事をしながら、色についてできる限り掘り下げてみました。まだこの仕事は継続しています。今回はそれに加えて上田市の瀧水寺で発表の機会が与えられましたので、従来のキャンバスに油彩で、空海の六大(地、水、火、風、空、識)をテーマに表現を試みました。
この世に存在するもの全てが可視的ではありませんから、それらの対象を絵にすることができるか、しかし、絵は本来見えない事を見えるようにしてきたものです。今の科学ではまだ解明できない事も、感じられるものであれば表現が可能ではないかと取りかかりました。
>> 岡田ムツミ 略歴
<以前の展覧会>
岡田ムツミ展 OKADA Mutsumi
2013.7.8(月)‐7.20(土)
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