井上雅之は1957 年神戸生まれ。’85 に多摩美術大学大学院美術研究科修士課程修了。 井上は大学で油画を専攻しますが、在学中に陶芸のロクロ制作に出会います。それは手の中で形が生まれる事の発見でした。器ものではない焼きものによって成形される亀裂や破砕された欠片に興味を持ち、以後、陶による大規模な立体作品を制作していきます。
 近年では、1995「ジャパニーズスタジオクラフツ展」(ヴィクト
リア&アルバート美術館、イギリス) 、1999「日本現代陶芸展-前衛の動向」(ファンボンメルファンダンフェンロ市美術館、オランダ)、2003「大地の芸術クレイワーク新世紀」(国立国際美術館)、2005「アルス・ノーヴァ―現代美術と工芸のはざまに」(東京都現代美術館)、2006「日本陶芸100 年の精華」(茨城県陶芸美術館)など国内外の企画展を中心に発表を続け、現在では、日本を代表する現代陶芸作家の一人として活躍しています。
 井上の作品は、粘土を板状にして形作るタタラを四角い筒状にし、そのピースを積み重ねて作られ、大作になると、100個以上にもなります。制作は粘土をこね、乾燥後解体、焼成し、再度組み上げられ、ひとつの作品として完成します。これらの仕事は、例えば農夫が耕作地を守るためにひとつひとつ黙々と積み上げた石組み、あるいは坦々と種の伝達のために巣の造営に働く蜂などの強靭な造形物を思わせます。そういった連続した行為によって支えられたひとつひとつの手仕事が蓄積され、その量が形となって現われたとき、井上の作品は、その中に隠され潜んでいる本質を見て取り「ものの力」となって物量とともに圧倒的な力となって目の前に現れます。
 今回の新作では、簡素な単位形態を自然流に寄せ集めていく構成手法が、鉄材・木材による『型』を用いることにより変容し始めています。単一の表面に覆われた形態ではない、仕切り節のついたパーツが増え、色彩の要素が加わり、いわば生命体における細胞のように連関し積み重なって全体を形成するという構造に変化してきました。
彼の作品がしばしば有機的な生命感を漂わせることも、こうした構造と無関係ではないように思われます。
 今回、ギャルリー東京ユマニテでは5年ぶりの新作展となります。 3 x 2 x 2m の大作を中心に計3 点の他、小品数点を展示いたします。新たな展開を見せる井上の新作をこの機会に是非ご高覧頂けますようご案内申し上げます。

井上雅之 INOUE Masayuki

1957 神戸市に生まれる
1985 多摩美術大学大学院美術研究科修士課程修了
1998 多摩美術大学美術学部工芸学科助教授
2006- 多摩美術大学美術学部工芸学科教授

【主な個展】
1984,’85,’02,’07 村松画廊(東京)
1985,’86,’87 ギャラリーマロニエ(京都)
1987,’88,’90,’91,’93,’95,’98 ギャラリーコヤナギ(東京)
1990,’91,’92,’94 ギャラリー天竺(東京)
1991,’93,’96 ,’97,’00 番画廊(大阪)
1997, ‘05 ギャルリー東京ユマニテ (東京)

【主なグループ展】
1987
第一回神奈川アートアニュアル(神奈川県立県民ホールギャラリー)
1988
シガアニュアル’88 陶・生まれ変わる造形(滋賀県立近代美術館)
東西現代陶磁展(韓国文化芸術振興院、ソウル)
1989
サントリー美術館大賞展’89 挑むかたち(サントリー美術館)
ユーロパリア’89 ジャパン 現代陶芸展 昭和の陶芸(モンス市立美術館、ベルギー)
1990
土の造形展(栃木県立美術館) 1991 国際現代陶芸展 変貌する陶芸(滋賀県立陶芸の森 陶芸館)
1992
コンテンポラリー ジャパニーズ セラミック(エバーソン美術館、アメリカ)
1993
現代陶芸現代邀請展(国立歴史博物館、台北) , 現代の陶芸1950-1990(愛知県美術館)
1995
ジャパニーズ スタジオ クラフツ展(ヴィクトリア&アルバート美術館、イギリス)
1996
いばらきバイアニュアル ディアロゴス 現代性の条件(水戸芸術館現代美術館ギャラリ)
1997,’01,’03, ’06, ‘08
雨引の里と彫刻(茨城県桜川市)
1999
日本現代陶芸展-前衛の動向 (ファンボンメルファンダンフェンロ市美術館、オランダ)
2000
茨城陶芸の現在(茨城県陶芸美術館) , Japanese Ceramics (ギャラリーホワイトヴィット、オランダ)
現代美術の磁場 Tukuba2000 (茨城県つくば美術館)
2001
現代陶芸の精鋭(茨城県陶芸美術館)
2002
開館記念展Ⅰ 現代陶芸の100年展 第一部「日本陶芸の展開」(岐阜県現代陶芸美術館)
2003
大地の芸術 クレイワーク新世紀(国立国際美術館)
2005
アルス・ノーヴァ――現代美術と工芸のはざまに(東京都現代美術館)
2006
日本陶芸100 年の精華(茨城県陶芸美術館)
2007
平成17-18 年度文化庁買上優秀美術作品披露展(日本芸術院会館、東京)

【パブリック コレクション】
東京国立近代美術館工芸館/ 茨城県陶芸美術館/ 岐阜県現代陶芸美術館/ 山口県美術館/ 滋賀県立陶芸の森陶芸館/ 和歌山県立/ 近代美術館/ 国立国際美術館/ 愛知県陶磁資料館/ 宮城県美術館/ 文化庁/ プリンセスホフ陶芸美術館(レイワーデン、オランダ)/
アルゼンチン近代美術館「日本の家/ エバーソン美術館(シラキュース、アメリカ)/ 国立歴史博物館(台北)/ ビクトリアアンドアルバート美術館(ロンドン、イギリス)

関連情報 2005年個展


「H-101」 2010 陶 Ceramics
290x120x212(h)cm


「H-102」 2010 陶 Ceramics
215x188x168(h)cm 


「H-103」 2010 陶 Ceramics
90x170x125(h)cm


exhibition view 1


exhibition view 2


exhibition view 3

撮影:林雅之
photo credit : Masayuki Hayashi

EXHIBITION

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