井上は1957年兵庫県神戸市生まれ。多摩美術大学大学院美術研究科修士課程を修了後、1980年代から陶を素材に立体作品を国内外の展覧会で発表、多くの美術館に作品が収蔵されています。2022年には初期作品から新作まで約70点による回顧展が茨城県陶芸美術館にて開催され、大型作品が並ぶ圧倒的な空間は好評を博しました。
土を捏ね、焼きしめて生成される陶は、古くから器など日常の中で使われてきましたが、井上はその身近な素材で作られたパーツを積み重ね、大規模な作品を構築するという手法により、日本を代表する現代陶芸作家の一人として活躍しています。大作になると、100以上のパーツをボルトで固定して組み上げる事でダイナミックな造形を生み出し、陶による表現の可能性を追求し続けています。
昨年の個展では、一転して両掌にのる小さな作品が発表されましたが、90点という物量のみならず、一つ一つの形や色彩の密度の高さが観る者を圧倒しました。さらに自身の制作を更新すべく、今回の新作では、一塊で窯に入る最大サイズの作品に取り組みました。物理的な制約を枷ではなく変化への足掛かりに、素材に向き合い、新たな造形への挑戦は続きます。新作5点とマケットを展示いたしますので、この機会をお見逃しなく、ぜひご高覧いただきますようお願いいたします。
〈作家コメント〉
昨年の小作品での個展を終え、習作としてのマケットを受けての制作に新たな造型への手掛かりを得ました。今回の作品はパーツの組み合わせではなく、窯の大きさの制限を受け止めての一塊での制作としました。これまでの板状の土による取り組みとは違い、システムを新たに組み直すことになり、素材との関係を手探りすることとなりました。マケット(雛形)を助けにした新たな関係に少々困惑し、幾度となく土を積み返し、焼き直しました。
>> 井上雅之 略歴
〈前回の展覧会〉
井上雅之展 ―形に囲まれる―
INOUE Masayuki Surrounded by Forms
2024.3.4(月)‐3.23(土)
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