野田裕示は1952年和歌山県生まれ。多摩美術大学絵画科油画専攻を卒業した翌年の1977年、当時現代美術の先駆的画廊であった南画廊(東京)で初めての個展を行い、そのダイナミックな作品は注目を集めました。その後も国内外の美術館、画廊で発表を続け、2001年には芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞。また、石彫の岡本敦生とのコラボレーション作品が現代日本彫刻展(2005年)で毎日新聞社賞を受賞するなど、立体と平面による新しい展開も見せています。2012年には国立新美術館(東京)で大規模な回顧展が開催され、以降も精力的に発表を続けています。
野田は一貫して、支持体と絵画表現の有様をテーマに制作に取り組んできました。1980年代初めの箱に入ったレリーフ状の支持体は、徐々に全体を麻の袋で覆ったものに変化し、さらにカンヴァスを重ねて画面を構成する手法が取り入れられ、人体のようなフォルムが現れたり、一転して白のフラットな画面に自由な形を描いたりと様々な変容を見せています。昨年の個展では、支持体となるカンヴァス上に切り分けられたカンヴァスが重ねられ、それらを画面上でずらすことで生じたすき間が緊張感のある線や形となる作品を発表しました。
今展で発表される作品では、さらにカンヴァスが重ねられ、厚さ2cmの布の層によって作品が構成されています。絵具でマチエールが作られたカンヴァスの面と、布の重なりがあらわになった断面が様々に組み合わされ、時に画面からはみ出すように配置され、遊び心のある表情を見せます。自由な形や色はそのままに、これまでとは全く違う手法を用いた新たな展開となります。野田の新境地となる新作28点が発表されますので、お見逃しなくぜひご高覧ください。
>> 野田裕示 略歴
〈前回の展覧会〉
野田裕示 〈ずらしの作法〉
NODA Hiroji The System of Displacement
2023.3.22(水)‐4.8(土)
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