北辻良央(きたつじ・よしひさ)は1948年大阪府生まれ。1972年多摩美術大学デザイン科卒業。1969年から発表を始め、関西を拠点に精力的に活動を続けています。地図をトレーシングペーパーに繰り返し写し取るコンセプチュアルな作品など、1970年代には記憶や反復をテーマにした作品を発表、1980年代からは多様な素材を用いた立体作品を中心とした物語性のある作品や、インスタレーション、油彩など様々な手法で作品を展開しています。1994年には文化庁派遣在外研究員としてイタリアに滞在。近年では、2000年に国立国際美術館で開催された個展「北辻良央
客人の庭」をはじめ、2004-05年「痕跡―戦後美術における身体と思考」(京都国立近代術館、東京国立近代美術館)、2012-13年「日本の70年代
1968-1982」(埼玉県立近代美術館、広島市現代美術館)、2014年「1974年―戦後日本美術の転換点」(群馬県立近代美術館)などに出品。
本展では、1970年代後半に制作された北辻の銅版画を中心に展示いたします。ゴッホの「ひげのない自画像」を基にした作品では、まず自画像を見ながら部分を模写した銅版画を制作し、その模写を基に部分を統合した自画像を完成させるという二重のプロセスを経て、一度は反転したイメージが再び元の状態となります。ゴヤの自画像やセザンヌの「カード遊びをする人々」といった名画にも同様の手法が用いられ、模写を繰り返す行為は反復をテーマとした1970年代前半からの流れが見て取れます。ドローイングを含む約15点の作品を展示いたしますので、ぜひご高覧いただきますようお願いいたします。
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