中井川由季は多摩美術大学大学院を修了後、1980年代から陶を素材に立体作品の制作を試み、国内外の展覧会で発表。作品は多くの美術館にコレクションされ、コミッションワークも手掛けています。
土を捏ね、焼き上げて生成される陶は、古くから器など生活の中で使われてきましたが、中井川はその身近な素材でいくつものパーツを作り、組み合わせることで大規模な作品を作り上げる手法で制作しています。近年取り組んでいるのは、少しずつ表情が異なる形を並べたものや、積み重ねていくことで構成される作品で、連続性によって生まれる集合体は、まるで命を宿した生き物のように不思議な存在感に満ちています。
昨年の個展では、滴り落ちる水をイメージしたという、白い球状のパーツが縦に連なる高さ3.2mの大作が地下会場に設置されました。ここ数年発表していた集まる形や積み重なる形とは違う縦の連続性が印象的な作品でしたが、今回は表面に半球状の窪みが無数にある作品を発表します。アトリエに眠っていた古い石膏型を用いたこの作品は、石膏型のもつ形の記憶なのか、どこかで見たことのある形に仕上がったと言います。本展では約6点の新作を展示いたしますので、ぜひご高覧いただきますようお願いいたします。
〈作家コメント〉
35年前に使った半球の石膏型を、もう一度使って形を作ろうと思い立ちました。窪みのある形を順番に石膏型に押し付けて半球を作り、そこから繋げて手捻りをするとどんな展開になるのか試してみたくなって作業を続けました。石膏型からより大きな鉄の型まで使い作って行くと、多数の窪みを持った大きな丸い形状になり、どこかで見たことがあるものが出来上がりました。具体的には何も想定していないのに、結果として、かすかな記憶が形として残る事になりました。と言うか、なってしまいました。何かに絡め取られた感覚です。
>> 中井川由季 略歴
〈前回の展覧会〉
中井川由季作品集「森にかくれる」出版記念展
陶:中井川由季 写真:林雅之
2023.10.10(火)‐10.14(土)
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